イタリアの旅の話/1995

◎ヴェネツィアの本屋さん。イタリアの旅の話・その9。

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15:00頃にホテルを出て、まずは聖マルコ広場へ向かいます。

ヴェネツィアの道は狭い。細い。観光名所であるリアルト橋近辺が例外的に広いだけで、たいていの道はお互い2人組で歩いていたらすれ違えないな……という幅。なかには1人ずつすれ違うのがやっとの道も。

世界的な観光地なのに、この道の狭さには驚きました。陸上の道はあくまで補助的なもので、やはり運河が王道なのだなあ。

その証拠に(?)運河にかかる橋はほとんどが太鼓橋のように中央が高くなっており、船が運河を通る時に邪魔をしない構造になっています。船の利便性を優先に考えられている。

日本では太鼓橋ですがヴェネツィアでは橋は階段で、乳母車とか宅配の人とかは大変。山ほどある橋をいちいち登って、降りて……。お母さんは登る時は乳母車を先に立て、降りる時には後ろ向きで降りていく。

乳母車に手を貸す人はあちこちで見かけました。こういう風に気軽に手を貸すことは、日本よりもヨーロッパの方が多いように思う。日本人は見知らぬ人に親切にすることを遠慮しますからね。

 

世界の大広間、聖マルコ広場。

聖マルコ広場はヴェネツィアの中心。「世界で最も美しい広場の一つ」といわれるところ。

ここに集まっている建物はさまざまです。種々雑多といってもいい。「世界で最も美しい広場」と言われるのは、この聖マルコ広場と、ベルギーのブリュッセルのグラン・プラス、イタリア・シエナのカンポ広場の3つですが、他の2つが統一感のある全体デザインなのに対して、聖マルコ広場は統一感はない。建物は一つ一つ独自なデザイン。

その別々なデザインの質が高く、それが寄り集まった見事さ。これが聖マルコ広場を世界で無二の場所にしています。

聖マルコ広場にある主な建物は、

丸いドームがエキゾティックな聖マルコ寺院。
ピンクの壁の色が可愛らしいドゥカーレ宮殿。
まっすぐに天へ伸びる大鐘楼。
十二宮のデザインとラピスラズリ色が美しい時計塔。

そしてそれらの建物を行政館と図書館がまとめる。この行政館が広場を取り巻いているのがデザインのミソ。行政館の半分は昔からあったものだけど、それをコの字型にくっつける増築をしたナポレオンはお手柄だった。言ったのはナポレオンだそうですよ、「世界で最も美しい広場」と。

我々はのんびりと、そしてはしゃぎながら写真を撮りまくりました。だってここ、ものすごく絵になるんですもの!どこにカメラを向けても映える。ばえる、という言葉が発生するずっと前の話です。カメラはデジタルではなく、フィルムの時代ですよ!

聖マルコ寺院は当然撮るでしょ。
大鐘楼も足元から真上にレンズを向けて撮るでしょ。
運河の水際まで行って、ゴンドラ越しに聖マルコ広場の対岸の島にある聖ジョルジョ・マッジョーレ聖堂も撮るでしょ。
ゴンドラがたくさん繋いであるところも、ため息の橋も、ドゥカーレ宮殿のレースのような装飾も撮る。撮りまくる。

撮ってもらった写真に写っている自分の顔は全部笑顔で、ほんとに楽しかったんだなと思います。普段写真に撮られるのがイヤだった頃ですから、こんなに自分の写真が残っている旅行は自分史上、一、二を争う。

 

ヴェネツィアの本屋さん。

その日の残りはショッピング。

わたしの希望で本屋さんに行きました。友達のリクエストで「子どもに何か絵本を買ってきて」って言われてたから。当時友達の子どもは1、2歳でした。イタリア語だとわたしも読み聞かせはできないよ?と思ったら、それでもいいんだって。記念になるから。

小さな(ヴェネツィアのお店はみんな小さい)本屋に入りました。上から下までぎっしりと本がつまった、いかにも本屋さんらしい本屋。ぱっと見、子供向けの本はなかったのでイケオジの店主に「すみません、子ども向けの本を探しているのですが」と訊きます。

あんまりピンとこなかったようなので、「動物などの本を」を言ってみます。わたしの頭に浮かんでいたのは「三匹のこぶた」とか「イソップ物語」などでした。が、本屋のおじさんが持ってきてくれたのは動物の図鑑。

後から考えれば、言葉に頼るフィクションじゃなく、むしろこういう図鑑系の方が楽しめたかもしれないと思いますが、この時はおとぎ話の方にしか頭がいってなかった。いや、こういうのではなく……。「たとえば、白雪姫とか、眠れる森の美女とか、ピーターパンとか」。

白雪姫は英語でSnow white,眠れる森の美女はSleeping Beauty,ピーター・パンはPeter Pan。でも固有名詞って難しいですからね。おじさんに通じるかどうかドキドキ。イタリア語でいえれば良かったけど、わたしが練習してきたイタリア語は「ペル・ファボーレ」(お願いします)と「ポッソ・フォトグラファーレ?」(写真を撮ってもいいですか)しかない。

それでもどうやら通じたらしく、おじさんはピーター・パンの本を出してきてくれました。絵本というよりは字が多めだったけど、薄めの本でお土産にはぴったり。これこれ!と思い、さっそくお買い上げ。

レジに行くと、そのそばに小さな写真集が。何の気なしに目で追って、……あれ?これ、なんか見たことある……

「前田真三がある!」思わず叫びました。前田真三という写真家が撮った写真集。主に富良野の風景を撮った人です。富良野には拓真館という個人美術館もあります。好きな写真家だったので、1冊か2冊、自分でも小さい写真集を持っていた。

まさかはるか海を越えたイタリアの、とある小さな本屋さんで日本の(マイナーではないが、超メジャーともいえない)写真家の本と巡り合うとは!しかも写真集のタイトルは「Primavera」。春です。前日にフィレンツェに行って、ボッティチェリの「プリマヴェーラ」を見て来たわたしの前に、前田真三の「春」が現れるとは!

迷わずそれも買いました。本の作りは日本のものより劣るが、写真印刷は特に問題はなく、富良野の風景がきれいな色で印刷されています。わたしの他におそらく何人かのヴェネツィア人がこの本を買って、美しい風景を見つめることになるのだろうと思うとちょっとうれしい。

絵本の方は包んでもらいました。おじさんが真っ赤な包み紙に金色のリボンをかけてくれる。丁寧に。その分時間はかかったけど、その慎重な手つきがうれしかった。

 

ヴェネツィアの午後は、写真撮影とショッピングで暮れる。

その後、革製品のお店やカメオのお店に寄りつつホテルへの道を帰ります。結局、革製品のお店では財布とキーケースを買いました。深い緑色で、お揃い。これもお気に入りで相当汚れるまで使ったなー。

カメオは後日別なお店で買いました。考えてみれば、この時は物欲の薄いわたしがけっこうまともな買い物をした唯一の旅行だったかもしれません。また、当時はイタリアの物価はかなり安かった。たしか体感で日本の7割くらいの感じでした。

途中の安直なバール(=カフェ)で少し早めの夜ご飯にしました。聖マルコ広場にはカフェ・フローリアンという長い歴史を誇る有名のカフェがあるのですが、この日はスルー。長距離移動の日のラフなジーンズではなく、ちゃんとした格好をして訪れたかったからです。……ま、そんなに変わらないんですけどね。

カプチーノも美味しい。サンドイッチも美味しい。あー、もう帰りたくないかもしれない!

 

 

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